今年度は「生老病死に寄り添う」をテーマに、5月~6月にかけて全5回の講座を開催いたしました。
■第1回 「生老病死に寄り添う」
講師:カトリック東京大司教区補佐司教 アンドレア・レンボ師
ドラクロワ、ゴッホ、モローの描いた「善きサマリア人」の絵画やミケランジェロのピエタをヒントに、「寄り添うとは、ひとつになること」を学びました。ソロモンの書の「だれにとっても人生の始まりは同じであり、終わりもまた等しい。」からも寄り添う心のヒントをいただきました。また、芸術は神の創造に協力するということ、というお話も印象的でした。
■第2回「発達に課題のある子供達とともに」
講師:放課後等デイサービス カリタス翼 向井 崇氏
発達障がいの解説、カリタス翼での支援例、自閉症スペクトラム当事者の手記を通して、「共生」について学びました。人には様々な「ちがい」があり、その「ちがい」を「まちがい」として排除するのではなく、理解し共に生きる。金子みすゞのことば「みんなちがってみんないい」が力強く響いてきました。
■第3回「認知症の人々とともに〜街のカフェで」
講師:NPO法人 Dカフェnet 代表理事 竹内弘道氏
認知症について、症状や当事者がどのような世界にいるのか、家族としてどのように対応したらいいのかを、ご自身の体験を交えて丁寧に解説していただきました。認知症になると記憶は残らないが、感情は残る。介護者は「何を語っているか」よりも「なぜそれを語っているのか」を想う。認知症当事者に変化を求めるのではなく、介護する側が関係性をリセットして「出会い直し」をする。といった重要なキーワードを教えていただきました。
■第4回「DVに苦しむ人とともに」
講師:NPO法人 女性ネットSaya-Saya 理事 千野洋見氏
DV、モラルハラスメントの概要、被害当事者の心理状態、また被害者と加害者の関係性について解説していただき、DVは個人の問題ではなく社会の問題であること、親密さと暴力による支配が表裏一体にあることを理解しました。またDV被害者の支援に際しては、被害者に二次被害を与えないこと、支援者の安全を守るために、ネットワークで支えることを教えていただきました。DV被害から回復した方々の手記からは、回復の過程の心のありようを知ることができました。
■第5回「最終ステージにある人々とともに
講師:訪問診療医 小堀鷗一郎氏
訪問診療医としてのご自身の歩みとともに、尊厳ある死の例をご紹介いただきました。現代社会が生に執着し、死を忌み嫌う風潮のある中で、死にのぞむ患者と寄り添う家族、医師をはじめとした関係者の在り方について、大変考えさせられ、「死ぬときぐらいわがままでいたい」という言葉にはっとさせられました。死は誰にでも必ず訪れるもの。「死こそ常態 生はいとしき蜃気楼と」という茨城のり子の詩が心に響きました。