講演会「障害のある子ども達と家族の暮らしを知る〜放課後等デイサービス カリタス翼での取り組みから〜」

日時:平成28年2月23日(火)午前10時〜11時30分

会場:文京区教育センター(2F 研修室)

講師:放課後等デイサービス カリタス翼

臨床発達心理士 向井 崇

 

〜内容〜

障害のある子どもと家族が抱えている不安や、生活上の困難について理解を深め、共生社会をめざして今できることを考えます。

 

〜講師プロフィール〜

平成14年より公益財団法人 東京カリタスの家に勤務。「子ども相談室」で知的障害児や発達障害児とご家族への支援に携わり、平成25年4月に「放課後等デイサービス カリタス翼」の立ち上げに関わる。現在、管理者兼児童発達支援管理者管理者。臨床発達心理士

 

<問い合わせ・申し込み先>

電話またはFAXに「氏名」「住所」「電話番号」を明記してお申し込み下さい。

申込期限 平成28年2月19日(金)

文京区教育センター総合相談担当

所在地:文京区湯島4−7−10

TEL:03−5800−2594

FAX:03−5800−2590

 

<会場までのアクセス>

くわしくはこちらを御覧ください。

・東京メトロ千代田線「湯島」駅(1番出口)から徒歩8分

・東京メトロ丸ノ内線「本郷三丁目」駅(2番出口)から徒歩10分

・都営地下鉄大江戸線「本郷三丁目」駅(5番出口)から徒歩8分

・都営バス「湯島四丁目」から徒歩5分

※自動車でのご来館はご遠慮ください。

つばさ通信2016年2月号より ~管理者のつぶやき(抜粋)~

申年だからというわけではありませんが…

 

最近自分の中で霊長類学(いわば「サル学」)がブームです。チンパンジーやゴリラ等の類人猿とヒトの遺伝子的違いは2%もないそうです。このように生物学的「隣人」である「お猿さん」の研究は、人間の「人間らしさ」を教えてくれるようで、とても興味深いです。

 

長年、ゴリラや屋久島のニホンザルを研究された京都大学の山極寿一先生によると(『「サル化」する人間社会』集英社インターナショナル,2014)、ヒトとその他類人猿を決定的に区別する行動とは、「言語の使用」や「火の使用」ではなく、「共同保育」と「共食」であるといいます。

 

約700万年前、アフリカ大陸の熱帯雨林で生活していた人類の祖先は、気候変動等を理由に、他の類人猿と森のなかで生活することができなくなり、疎開林や草原へと進出せざるを得なくなりました。熱帯雨林のなかでは手を伸ばせば容易に食物が手に入れられますが、疎開林や草原のような過酷な環境では食物がまばらに存在しており、食物を集めて持ち帰ることをしなければ群れを維持できなくなりました。そこで人類はまず「直立二足歩行」という特徴を持つようになったといいます。

 

人類はこうして、直立二足歩行によって空いた手を使い、食料を持ち帰って集団で共に食べるようになりました。一方で、直立二足歩行により骨盤が小さく産道が狭くなり、子どもが生理的に未熟な状態で産まれてくるようになりました。また、直立二足歩行によって逃げ足が遅くなり、草原の肉食動物に襲われやすくなりました。そこで人類は、子どもを一人でも多く残せるように、授乳期間を短縮させ(チンパンジーは5年、ゴリラは3年、ヒトは1年)、多産の道を選択するようになりました。結果として、人類は「手のかかる」子どもをたくさん産むことで、環境に適応していったのです。当然、お母さんは一人でそれだけたくさんの未熟な子どもを育てることができないので、親以外の大人達が多くの子どもたちを一緒に育てるようになりました。このようにして、「共同保育」という人類を特徴づける行動が生まれたのでした。

 

手のかかる子どもをたくさん抱える人類のお母さんは、一人の子どもにつきっきりになることができません。そうすると、子どもは声を上げてわんわんと泣きますが、お母さんは離れている子どもを安心させるために、やさしく声を掛けます。その声掛けが、集団で保育する場のなかで音楽的なメロディーを伴い、仲間内で共通する「子守唄」に発展し、さらにそこから「言語」が生まれたのではないかと考えられています。いわば、初期人類は、進化の過程で徐々に社会性を発展させ言語を獲得したのではなく、子育ての必要性から共同保育を発展させ、結果として社会性や言語を獲得したと考えられているのです。

 

このような人類の進化の過程を振り返ると、現在の社会状況がいかに人間にとって無理があるか、分かります。そもそも、人類は母親が一人で子どもを抱えながら育てるように進化していないのです。しかし現代社会は、まさに「子育て」が「孤育て」と言われるように、母子が孤立化している状況になっています。本来、人類は子ども達を「手のかかる」状態で産まれるように進化し、子育ての苦労を共有する社会を築いてきたはずです。そのような社会のなかで大人同士が共同で子育てをするからこそ、子ども達の社会性も発達し、大人もまた他者との協力する能力を身につけたのではないでしょうか?「共同保育」、言い換えれば「共に育ちあう」社会をどうやって作っていくのか?日本社会の大きな課題だと思います。

(文責:向井崇)

つばさ通信1月号より ~管理者のつぶやき(抜粋)~

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

 本当にあっという間にカリタス翼も三年が経ちました。昨年も、皆さんのおかげで大きな事故もなく、無事に運営することができました。ありがとうございました。

 改めて昨年を振り返ると、カリタス翼にとって、未来に繋がるような、ささやかだけど大きな変化がありました。

 

 一つは、秋に行ったシンポジウムの開催でした。「放課後等デイサービスの質の向上を目指して、今何ができるか?」という(わりに)堅苦しいタイトルでしたが、思いの外多くの方にご参加いただきました。翼職員も運営の傍ら、グループディスカッションに参加させていただきましたが、職員にとって様々な方と現場の苦労を交えた忌憚ない意見交換をすることができ、運営側としても学ぶことがたくさんありました。

 このシンポジウムの開催と軌を一にするように、翼職員の意識に変化が生じてきたように思います。つまり、「もっと地域に出ていき、いろいろな人と繋がりたい」という思いが翼職員のなかに自発的に生じてきたように感じます。それは、翼職員がシンポジウムで他事業所の方々とのディスカッションでカリタス翼の意義や独自性を改めて意識したことも大きかったと思いますが、日々の実践を通して、もっと子どもたちのことを理解したいという熱意から、必然的に導き出されてきたように思いました。

 

 一つの試みとして、例えばこれまでは児童発達支援管理責任者(つまり向井)が単独で保護者面談をするケースが多かったのですが、今年からは現場の職員も同席するようにし、より子どもたちに近い目線からお話できるようにしました。今まではデイサービスの準備に人手をかけていたのですが、あえてそこを削ってでも、翼職員が直接保護者の皆さんとお話できる機会を作ることにしました。現場職員がお子さんに関するエピソードを保護者の皆さんからお聞きすることができ、子どもたちに対する理解がより深まることで、子どもたちの理解がより現場に活かしやすくなり、結果として子どもたちがさらに落ち着いて過ごせるようになりました。現場職員と保護者の皆さんが繋がった結果でした。

 さらに、他事業所や学校、教育センターとの連携会議や定例会議にも、現場職員を連れ出して、どんどん参加させるようにしました。これも、子どもたちの理解を他機関と共有することができたため、支援の質が上がることに繋がっていくと思います。

 

 教材を作ったり、プログラムの準備をその日その日の利用者に合わせて完璧に作り上げることももちろん大事ですが、それだけだと、どうしても独りよがりの内向きな支援になってしまう危険性があります。「カリタスのやっていることはなんだかすごそうだけど、よくわからないよね…」という支援では、せっかく翼で積み上げていることを地域で活かすことができなくなってしまいます。個人的に、この一年で得た大きな気付きは、現場が主体となる連携であり、それは「人と人との繋がり」なんだと思いました。

 

 というわけで、カリタス翼にとってまた新しい一年を迎えますが、今年の翼のテーマは「地域に出る」ということにしたいと思います。将来、子どもたちが地域で共に生きることができるように、まずは私達から地域に出ていき、様々な方と連携をとりながら子どもたちと関わっていきたいと思います。

 2016年のカリタス翼もどうぞよろしくおねがいします。

 

(文責:向井崇)